近年,遠赤外線の酸素や炭素が放つ輝線スペクトル(電離酸素輝線[OIII]と電離炭素輝線[CII])の観測による宇宙再電離前期(赤方偏移z > 8)の開拓が,目覚ましい成果をあげています.James Webb宇宙望遠鏡やEuclid衛星,Roman宇宙望遠鏡など近赤外線宇宙望遠鏡の時代がいよいよ到来し,宇宙再電離前期の銀河候補天体が南天・北天問わず数多く発見される期待が高まる今,こうした銀河候補天体に対する遠赤外線輝線のサブミリ波分光観測はその重要性を増しています.また,こうした科学的要求に応える受信技術など,アルマ望遠鏡のアップグレード計画「ALMA2」を支える要素技術が着々と実現してきています.
私たちのFINER計画では,大型ミリ波望遠鏡LMTと組み合わせることで北半球でアルマ望遠鏡に比肩する分光探査性能を実現する,120―350 GHz帯ヘテロダイン受信機FINER1の開発を推進しています.ALMA2の鍵技術を活用するLMT-FINERは,アルマ望遠鏡に比して40%の集光面積,アルマと同等の標高(4,600 m)がもたらす大気透過率,アルマよりも5倍広い分光帯域をもたらします.これにより,アルマと同等の分光探査効率を,アルマではアクセスが困難な北天(赤緯 > +30°)で達成し,未分光のまま残された北天の超高赤方偏移(z ~ 8-15)候補天体を[OIII]および[CII]輝線で分光同定しその星間物理を探る計画です.
FINERプロジェクトは,2022年度から開始された日本学術振興会の支援2を受け,2025年初頭にLMTに受信機システムを搭載する予定です.
Far-Infrared Nebular Emission Receiver ↩︎
科学研究費補助金・基盤研究(S)「遠赤外線微細構造線で切り開く前・宇宙再電離期の銀河形成」 ↩︎
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